2013年5月11日土曜日

日吉館


ふと耳にした日吉館という言葉。
昔話ですが、おつきあいください。

女子大1年の秋。
同級生3人と私で大学のカフェテリアで一杯50円のうどんをすすりながら、
奈良国立博物館で開催中の正倉院展の話をしていました。
”行きたいね〜〜”   ”行こうか!”
で話はまとまって、その日の夜出かけることになりました。

東京駅発23時半頃の下り大垣行き普通列車で西に向かいました。
この列車結構込み合っていて、いくつかの駅を通り過ぎてから、やっと4人でワンブースの席を確保できました。
固くて狭い座席で寝れる訳もなく、一人の友達は途中から床に長くなって寝る始末。
明け方に大垣に到着。その後も在来線を乗り継いでお昼頃奈良に着いたと思います。

正倉院展を感動で観て、夕方さてどうしよう....

一般教養の日本史の教授が ”奈良で泊まるなら、日吉館に行きなさい。大学の名前と私の名前を言えば泊めてもらえるから”
と自慢していたのを思い出した私達は、夕闇迫る中、厚顔無恥にも日吉館を訪れたのです。

この日、日吉館は満員だったのですが、私達の話を聞いた女将さんが、玄関を入ったところの火鉢のある部屋に泊めてくれることになりました。

他のお客さん達はもう食事が終わっていましたが、私達にもすき焼きを食べさせてくれ、柔らかい布団にくるまって、長くなって休むことができました。

翌日、お礼を言って日吉館を出るとき、女将さんが ”これ途中で食べて” と箱に入った和菓子をくださいました。

その日は、発掘がだいぶ進んだ平城宮跡を、いただいたお菓子を食べながらぶらぶら歩き、また普通列車を乗りついで帰途につきました。

日吉館は随分前に営業をやめ、建物も数年前に取り壊したようです。

会津八一をはじめとして、文化人が集った日吉館。
私達のような風天も泊めてくれる懐の深さがあったのですね。

いい思い出です。




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